迷い鳥と、その飼い主

この記事では、迷子になった愛鳥が直面する厳しい現実についてお話しします。
これらの内容は、飼い主の皆さんに「ロストを起こしてはならない」という意識を高めていただくためのものです。決して絶望していただくためではありません。無事に保護されるケースもあることも事実です。

姉妹サイト「帰ろう、ことり。」では、迷子鳥の保護ガイドラインや初動対応のポイントを詳しく解説しています。迷子になった鳥を見つけるための案内や、保護の方法や対応、保護された鳥を飼い主のもとに戻すための手順をガイドラインとして提供していますので、ぜひ参考にしてください。

外の世界で幸せに、という誤解

「外の世界で幸せにね」といったコメントが見られることがありますが、これは誤解です。
飼い鳥には帰巣本能がなく、驚いた拍子などに一度外に出てしまうと自力で帰ることは、実際にはほとんどありません。
また、メディアで描かれる「カゴの鳥から解き放たれる描写」の影響を含めて、外に出ることが自由や幸せ、と誤解されることがあります。しかし、実際には人の管理下で育ち、同種の群れの仲間も居ない「飼い鳥」が外で生き延びることは非常に難しいです。

外の世界は過酷

すぐに保護できなかった場合、迷子になってしまった愛鳥は、以下のような厳しい現実に直面します。

エサや水が見つけられない

「飛べる」ということは、小さな身体でも外敵から逃げることや、上空からエサや安全な場所、新たな水場を探すことに適しています。しかし、ペットとして育った鳥は、野生で生きる知識やスキル、そして群れの仲間を持っていないため、食事を見つけるのが非常に困難です。自然環境でのエサの取り方を知らないため、飢えに苦しむことが多いです。

また、水源を確保することもできない場合は、脱水状態になるリスクが高まります。鳥は飛べるよう身体を軽くするために、消化と排泄のスピードが非常に早いのが特徴です。そのため、24時間食べないことで生命に関わる場合もあります。

外敵から襲われる

野外には、飼い鳥にとって多くの脅威が存在し、飼い鳥にとっては非常に危険です。
大型のインコであっても、野生下では被捕食者側なのです。
カラスやトビ、野良猫などは飼い鳥を襲う可能性があります。飼い鳥は、本来国内には居ない目立つ姿をしており、群れの仲間もいません。これらの外敵から逃げきれず襲われ、捕食されるリスクが高いです。
また、エサや水が確保できてしばらく居着くことができても、カラスなどに襲われたことでその場所を離れてしまうこともあります。

カラスは大変賢く、数も多く、単独でも群れでも狩りをします。
特に産卵後から子ガラスの巣立ちまでの時期(5月~7月頃)は、威嚇行動が増え、攻撃的になる傾向にあります。

あの子の羽根

迷子捜索に関わった副隊長から伺ったエピソード
ある日、「あの子の羽根が落ちていて!きっと近くにいると思うんです」と、手がかりを見つけた飼い主さんから写真を見せてもらった瞬間、副隊長は胸が詰まったと苦い胸中を私に話してくれたことがありました。
1枚や2枚ではなく、たくさんの羽根が一気に抜けて茂みの中に散らばっていたのです。
パニックになると一気に抜けるような鳥種も一部にはいますが、捜索対象の鳥さんはそうではありませんでした。
つまり、それが何を意味するのか、保護や捜索に何度も関わってきた副隊長や仲間には理解できてしまいましたが、心身共にすり減らし、ようやく希望を見つけたかもしれない飼い主さんに伝えることができなかったそうです。
ほどなくして、飼い主さんは血のついた”間違いなくあの子の、身体の一部”を見つけ、何が起こったのか受け止めることになりました。飼い主さんは、それを大切に持ち帰ったそうです。

気候・天候の厳しさ

飼い鳥は、元々は気候の違う海外からきており、屋内での安定した環境に慣れているため、外の厳しい気候に長期間耐えられる身体ではありません。
夏の暑さ、冬の寒さに耐えられず衰弱してしまうことが多いです。春や秋も油断ならず、激しい寒暖差や、厳しい天候の変化に対応できずに衰弱し、命を落とすこともあります。

孤独とストレス

飼い鳥は社会的な動物であり、仲間や飼い主と過ごすことが大切です。
しかし、迷子になると仲間がいないため、孤独を感じ、強いストレスを受けやすくなります。
小型の鳥のなかには、スズメの群れに混ざってエサをついばんで一時期を過ごす個体もいますが、身を寄せ合うことはできないのです。孤独感からくるストレス、いつ襲われるかも分からないという不安や恐怖は、大きな負担となります。

飼い主の苦悩

迷子にしてしまった愛鳥を見つけられない飼い主さんが直面する現実は、精神的にも非常に辛いものです。
愛する鳥がいなくなることで、心の中に大きな穴が開き、日常生活に多大な影響を及ぼすことがあります。
飼い主さんがどのような困難と向き合い、どんな現実に直面するのか、詳しく見ていきましょう。

途方もない捜索

愛鳥を大切に想う飼い主さんは、すぐに捜索を開始します。しかし、翼を持つ鳥を見つけるのは非常に困難です。
鳥は飛翔能力を持っているため、捜索範囲は広がり、どこにいるか予測がつきません。
ロストしてしまった際にはすぐ行動し、周りに頼ることが大切ですが、それができないことも少なくありません。
捜索活動は物理的にも精神的にも負担が大きく、長期間にわたることもあります。

自分を責める

愛鳥を逃がしてしまったことに対する自責の念は、飼い主さんの心に重くのしかかります。日常の中でふとした瞬間に「あのとき、どうして私は」「もっと気をつけていれば…」という後悔が頭をよぎり、自己嫌悪に陥ることが多いです。この自責の念は、時間が経つにつれて増していくことが多く、大きな精神的な負担となります。

さらに、インターネット上での反応も飼い主の心を傷つけることがあります。迷子の投稿をインターネットにあげた際に、他のユーザーからの批判や責めるコメントを受けることが怖くて、投稿できなくなったというケースもあります。ネット上でのコミュニケーション不慣れな場合もあり、誤解を招いてしまうことも・・・
周りからのネガティブな反応や個人攻撃は、飼い主がをさらに責める原因となり、精神的なストレスを増幅させ、余計な部分に思考と時間を使わせてしまうことにも繋がります。

家族関係への影響

迷子になった愛鳥を巡る問題は、家族関係にも影響を及ぼすことがあります。家族全員が愛鳥を大切にしていた場合や意識に差があった場合、いずれにおいても、責任の所在を巡って亀裂が生じることがあります。このような状況は、家族全体にとって非常にストレスフルであり、家庭内の雰囲気を悪化させる原因となります。

捜索活動の難しさ

捜索活動を続ける中で、愛鳥を見つけられずに他の迷子鳥を保護するケースもあります。
飼い主は、自分の愛鳥を見つけるためにあらゆる手段を尽くしますが、他の迷子鳥を見つけることがあり、その度に心が揺さぶられることがあります。さらに、捜索活動自体が体力的にも精神的にも大きな負担となり、日常生活に支障をきたすことがあります。

まとめ

この記事では、迷子になった愛鳥が直面する厳しい現実についてお話しました。
迷子鳥がエサや水を見つけられず、外敵からの攻撃にさらされる危険性、そして飼い主さんが感じる自責の念や精神的な苦痛について触れました。

24時間、365日完璧な人間はいません。ロストは、決して他人事ではありません。
これらの苦い現実を知ることで、飼い鳥のロストを防ぐための意識を高めることが重要です。

次の記事では、実際に保護されたケースや、具体的な初動対応について詳しく紹介します。迷子になった場合でも諦めずに行動を起こし、一羽でも多くの愛鳥が飼い主のもとに戻ることを願っています。

さらに詳しい情報やガイドラインについては、姉妹サイト「帰ろうことり」をご覧ください。
「帰ろうことり」では、迷子鳥の保護ガイドラインや初動対応のポイントを詳しく解説しています。ロストをしていなくても、今後しなくても、保護する立場についても触れている内容に目を通しておくと参考になるかもしれません。

この記事が、愛鳥を守るための意識を高める一助となれば幸いです。次回の記事もぜひご覧ください。